債務整理 2021/12/22

債務整理するデメリットは?ブラックリスト入りした場合の対処法やよくある誤解

債務整理することでメリットもある一方、やはりデメリットはあるもの。こちらの記事では、債務整理の4種類の手続き「任意整理・個人再生・自己破産・特定調停」のそれぞれのデメリットを整理するとともに、デメリットへの対処法をご紹介します。

竹原万葉

執筆者 竹原万葉

都内在住のライター・編集者。

目次

債務整理のデメリットは方法によって異なる

弁護士

債務整理には以下の4つがあります。

任意整理 裁判所での手続き不要。弁護士・司法書士が債権者との交渉を代理して、将来の手数料・利息を省いた返済額を返済できるようにする。3~5年で分割で返済する。一部の債権だけ選べるのが特徴
個人再生 裁判所に返済総額を減額した個人再生計画を提出し、許可されたら、減額後の金額のみの返済となる。3~5年で分割で返済する。「住宅ローン特則」により自宅を手放さずに借金減額が可能
自己破産 裁判所から債務の支払いを法的に免除してもらう。自宅や自家用車を手放す必要がある
特定調停 借金が返済可能な場合に利用可能。経済的に破綻しないように債権者と申立人(債務者)が話し合って返済方法などを調整する。調停委員が両者の調整をしてくれる。合意に至れば調整後の計画で返済可能だが、合意ができないと特定調停手続きはそのまま終了してしまう

それぞれの方法によってデメリットが異なります。各方法のデメリットをくわしく確認していきましょう。

債務整理のデメリット①任意整理の場合

債務整理の中でも任意整理の手続きをした場合の、デメリットをまとめました。

解説者のイメージ

任意整理とは、裁判所での手続きをせずに弁護士・司法書士が債権者と直接交渉して、新たに3~5年で分割して返済できるようにする手続きです。

保証人への連絡がある

債務の保証人を立てていると、保証人に対して一括請求の連絡が届きます。しかし、必ずしも保証人が即座に全額を支払わねばならないわけではありません。

もし、当該債権について保証人が同時に任意整理をし、返済期間の猶予利息の減免などについて債権者と合意できれば、保証人は支払わずに済みます。

ただし、保証人も任意整理を行うため、保証人の信用情報にも事故情報が登録されます

ブラックリストへの登録

任意整理をすると、信用情報に事故情報が登録されます登録された内容は約5年間にわたって保有され、この間、借入れなどができなくなります

官報への掲載はされません。

記事内参照)ブラックリストとは?

元金は減免されない

任意整理の場合、利息は減免できることがありますが、元金を減らすことはできません

家族カードの任意整理は家族に内緒にできない

家族カードを発行しているクレジットカード会社について任意整理を考えている場合は、家族に内緒にできません。

本人会員が利用停止となるのに伴い家族のカードも使えなくなって、家族に気づかれてしまうためです。

任意整理のデメリットまとめ

  • 保証人への連絡がある
  • ブラックリストへの登録
  • 元金は減免されない
  • 家族カードの任意整理は家族に内緒にできない

債務整理のデメリット②個人再生の場合

債務整理の中でも個人再生の手続きをした場合の、デメリットをまとめました。

解説者のイメージ

個人再生とは、全債権者に対する返済総額を減額し、減額した額について分割で返済する内容の個人再生計画を裁判所に提出、裁判所が認めたら残りの債務が免除されるという。原則3年間(難しい場合は5年まで延長可)で支払います。返済を続けられる方が選べる債務整理の方法です。

家族に内緒にできない

個人再生では家族に知らせずに手続きすることが難しいです。裁判所に報告するために、同居家族から数カ月分の給与明細を預かる必要があります。

≫≫家族に内緒にしたい場合は任意整理がおすすめ

保証人への連絡がある

個人再生でも、借入れする際に保証人を立てている場合、保証人に対して一括請求の連絡がいってしまいます。

≫≫保証人の任意整理についてはこちら

一部の債権者だけを選べない

個人再生では、すべての債権者について手続きが必要です。

個人再生ではすべての債権が対象となります。ローン支払い中の車や家電はまだ所有権がないため、個人再生の手続き後にローン会社に回収されてしまいます

ブラックリストへの登録

個人再生を行うと、信用情報への事故情報が登録され、約5~10年にわたって借入れなどができなくなります。

≫≫ブラックリストとは?

官報への掲載

個人再生を行うと、「官報」の本紙の裁判所公告に「住所・氏名・事件番号」などが掲載されます

個人再生の官報掲載例

個人再生の官報掲載例
出典:インターネット版官報(※直近30日分は無料閲覧が可能。)

個人再生のデメリットまとめ

  • 家族に内緒にできない
  • 保証人への連絡がある
  • 一部の債権者だけを選べない
  • ブラックリストへの登録
  • 官報への掲載

債務整理のデメリット③自己破産の場合

自己破産の手続きをした場合の、デメリットをまとめました。

解説者のイメージ

自己破産とは、収入・資産の点から支払不能であると裁判所に認めてもらい、債務の支払いを法的に免除してもらう債務整理の手続きです。

家族に内緒にできない

自己破産の手続きでは家族の収入の確認が必要です。そのため、個人再生と同様、家族に内緒にするのが難しいです。

≫≫家族に内緒にしたい場合は任意整理がおすすめ

保証人への連絡がある

自己破産は個人の手続きであるため、主債務者が自己破産しても保証人の返済義務は継続します。そのため、自分は自己破産で債務が免責となっても、保証人には一括請求の連絡がいきます。

≫≫保証人の任意整理についてはこちら

一部の債権者だけを選べない

自己破産は収入・資産の点から一切支払い不能であると示す手続きなので、当然ながら一部の債権者だけを選ぶことはできません。

ブラックリストへの登録

自己破産の場合も、信用機関に事故情報が登録されます。保有期間は約5~10年です。この間は借入れができなくなります。

≫≫ブラックリストとは?

官報への掲載

自己破産を行うと、「官報」の本紙の裁判所公告に「住所・氏名・事件番号などが掲載されます

自己破産の官報掲載例

自己破産の官報掲載例
出典:インターネット版官報(※直近30日分は無料閲覧が可能。)

財産が回収される

自己破産すると、債務が免責となり返済しなくてよくなる一方、(自由財産を除く)財産が破産会在任によって処分されてしまいます。持ち家も例外ではありません。

就業制限がある

自己破産の申し立てると、破産者の多くは債務が免責となるまでのおよそ2~4カ月の間、一部の資格や職業に制限を受けます。

就業制限を受ける業務の例

  • 宅地建物取引士
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 弁護士
  • 弁理士
  • 司法書士
  • 行政書士
  • 社会保険労務士
  • 警備員

自己破産のデメリットまとめ

  • 家族に内緒にできない
  • 保証人への連絡がある
  • 一部の債権者だけを選べない
  • ブラックリストへの登録
  • 官報への掲載
  • 財産が回収される
  • 就業制限がある

債務整理のデメリット④特定調停の場合

債務整理の中でも、特定調停の手続きをした場合のデメリットをまとめました。

解説者のイメージ

特定調停とは、債務者(本人)の経済的再生を図るために特定債務者に借りている債務の返済方法や返済額について、裁判所の調停委員が間に立って、利害関係の調整を行う手続きのことです。

特定調停では調停成立するとは限らない

相手方(債権者)が協力的でない場合、合意形成までに時間がかかってしまいます。

返済の遅れで強制執行が行われる場合がある

合意形成に至り調停が成立すると、裁判所により調停調書が作成されます。

もし調停で合意に至ったペースで返済ができなくなると、債権者により訴訟をせずに強制執行が行われる可能性があります。

強制執行されると、給与や預金だけでなく家財道具や貴金属なども差し押さえられ、売却され、債権回収に充てられてしまいます。着実に返済することが重要となります。

特定調停のデメリットまとめ

  • 特定調停では調停成立するとは限らない
  • 返済の遅れで強制執行が行われる場合がある

債務整理の種類とデメリットのまとめ

任意整理 個人再生 自己破産 特定調停
家族にバレずに手続き × ×
借入れ制限 約5年 約5~10年 約5~10年 約5年
官報への掲載 なし あり あり なし
就業の制限 なし なし あり なし
時間・労力 ×

債務整理の最大のデメリットはブラックリストへの登録

ブラックリストのイメージ

債務整理を行う最大のデメリットはブラックリストに事故情報が登録されることです。

債務整理のデメリットである「ブラックリスト」は個人の信用情報のこと

債務整理のデメリットとしてよくいわれる「ブラックリスト」とは、信用情報機関の保有する個人の信用情報のことを指します。

「ブラックリストに登録された」「ブラックリスト入りしている」というのは信用情報機関の保有する個人の信用情報に事故情報が登録されているという意味です

信用情報機関には3種類ある

信用情報機関は加盟団体の主体が異なります。大きく分けて、消費者金融系・信販系・銀行系の3種類があります。

  • JICC株式会社日本信用情報機構
    消費者金融系をはじめとして銀行も加盟
  • CIC株式会社シー・アイ・シー
    信販系のクレジットカード会社のほか消費者金融系も加盟
  • KSC全国銀行個人信用情報センター
    銀行系(信用金庫・信用組合も含む)が加盟

信用情報機関が握っているのはローンの契約内容や返済状況

金融機関に開示する個人の信用情報が登録されています。例えば、CICの保有している情報は以下のようなものです。

申込情報

クレジットやローンの新規申込みの支払い能力を調査するための情報。

情報の保有期間:照会日より6カ月間

クレジット情報

締結した契約の内容や支払い状況の情報。

情報の保有期間:契約期間中および契約終了後5年以内

利用記録

クレジットカードやローンの利用途上における支払い能力の調査のために、加盟会員(カード会社など)が照会した事実を表す記録。

情報の保有期間:照会日より6カ月間

信用情報に事故情報が残るとできないこと

ブラックリストに登録されるということは、金融機関からの信用を失うということ。信用情報に事故情報が残っている間は借入れなどができなくなります。それにともない、以下のような手続きは取れなくなります。

  • クレジットカードを作れなくなる
  • ローンを組めない
  • 分割払いを利用できない
  • 不動産の賃貸で保証会社が利用できない場合がある
解説者のイメージ

例えば、ある債権者のクレジットカードの債務について債務整理すると、CICに事故情報が登録されて、新たなカードが発行できなくなったり契約中のカードの更新ができなくなったりします

信用情報機関の取引事実に関する情報の保有は期間限定

信用情報に事故情報が登録されても、それがずっと保有されるわけではありません。債務整理の種類と信用情報機関との組み合わせによりますが、約5~10年で事故情報は抹消されます。

任意整理 個人再生 自己破産 特定調停
JICC 5年以内※1 5年以内※1 5年以内※1 5年以内※1
CIC 5年※4 ※2 5年※4 ※2
KSC 5年※3 10年※3 10年※3 5年※3

※1:契約継続中および契約終了後。出典)登録内容と登録期間|信用情報について|JICC

※2:出典)裁判所へ特定調停や民事再生を申請した場合、および弁護士・司法書士に債務整理を依頼した場合、自分の信用情報にその事実がコメントとして登録されますか?|よくある質問|CIC

※3:出典)情報の登録期間|センターの概要|KSC

※4:契約期間中および取引終了から。出典)情報の登録期間|センターの概要|KSC

債務整理の最大のデメリットであるブラックリスト入りしないためには債務整理をせず支払う必要がある

ブラックリスト入りを避けるためには、債務整理をせずに支払うことを検討する必要があります

例えば、副業をする、配偶者や親族に借りる、保証人に立て替えてもらい返済するなどの方法があるでしょう。

債務整理のデメリットへの対処法はいくつかある

解決

債務整理の種類とデメリットをご紹介してきました。実は、債務整理のデメリットへの対処法はないわけではありません! 便利な対処法を確認していきましょう。

家族にバレるのが困る人は任意整理を依頼する

債務整理のうち個人再生や自己破産では家族に内緒で借金問題を解決することが難しいです。家族の収入なども確認する必要があるためです。

他方、任意整理なら家族に内緒で手続きすることも可能です。

保証人をお願いしている人がいる場合は事前に相談を

債務整理をすると、保証人となってくれた人に返済の負担をかけるだけでなく、同じく債務整理をさせることにもつながりかねません。保証人の家族にも影響があり得るので、事前に相談するほうがよいでしょう

関係がこじれそうな場合は、事前に弁護士・司法書士に相談して第三者として同席してもらうのもよいかもしれません。

クレジットカードの代わりにプリペイドカードを利用する

ネット通販などでクレジットカードを使う方なら、債務整理後はプリペイドカードを利用すると便利です。

審査なども無いため、発行後は通常のクレジットカード同様に支払いに使うことが出来ます。

配偶者などにクレジットカードの家族カードを発行してもらう

配偶者などの家族が働いているなら、家族を本人会員としてクレジットカードを契約してもらい、さらに家族カードを発行してもらえば、債務整理後でもすぐにクレジットカードを使えます。

ローン・分割払いはせず貯金して一括払いする

債務整理後は貯金してからの購入に切り替えていくとよいでしょう。

しかし、住宅を購入する場合は一括での支払いは難しいです。経済状況によりますが、先に住宅ローンを組んでから自己破産以外の債務整理をすれば、住宅ローンを利用しながら自宅を手放さずに済みます

不動産を借りるときは保証会社を利用しない

不動産を賃貸する際、一部の保証会社は信販系のCICに登録しているため、保証を断られる場合があります。保証会社を使わず家族や友人に保証人をお願いするとよいでしょう

債務整理の誤解されがちなデメリット

疑問

債務整理のデメリットとして誤解されがちな、以下はすべて間違いです

  • 会社にバレてクビになる
  • 家族も財産を失ったり信用情報に事故情報が登録されたりする
  • 戸籍に自己破産した記録が残る
  • 老後に年金を受給できなくなる、減額される

債務整理をすることを、必要以上に怖がる必要はありません。

債務整理のデメリットと対処法のまとめ

債務整理のデメリットと対処法のポイントをまとめておきましょう。

要点のまとめ

  • 債務整理の最大のデメリットはブラックリストに載ること
  • 信用情報の事故情報は約5~10年経つと消える
  • 債務整理後でもプリペイドカードを使えばクレジットカードのようなカード支払いが利用できる
  • 会社の雇用や家族の信用情報、老後の年金に債務整理の事実が影響することはない

債務整理によるデメリットはありますが、ずっと続くわけではありませんし、影響の範囲も限られています

必要であれば債務整理を利用して落ち着いて返済したり、計画的にお金を使う生活に切り替えたりしていきましょう。

前の記事
債務整理は費用がかかっても弁護士・司法書士がおすすめ!費用の相場の実例と一括で払えない場合の対処法を解説

債務整理は費用がかかっても弁護士・司法書士がおすすめ...

次の記事
法テラスは費用の立て替え制度あり!お金がなくても弁護士・司法書士へ依頼できる?

法テラスは費用の立て替え制度あり!お金がなくても弁護...

関連記事

債務整理は費用がかかっても弁護士・司法書士がおすすめ!費用の相場の実例と一括で払えない場合の対処法を解説

2021/12/09

債務整理は費用がかかっても弁護士・司法書士がおすすめ!費用の相場と対処法を解説

借金減額診断は罠じゃない!国が認めた救済措置をサポートする弁護士と完済への一歩を踏み出そう

2021/10/19

借金減額診断は罠じゃない!国が認めた救済措置をサポートする弁護士と完済への一歩を踏み出そう

自己破産するとその後の人生や家族はどうなる?仕事・住まい・費用のデメリットを漏らさず掲載!

2021/10/05

自己破産するとその後の人生や家族はどうなる?仕事・住まい・費用のデメリットを漏らさず掲載!